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新しい音楽をディグる方法:AIからジャケ買いまで、古今東西の音楽探索手法を暴く

ディグる(digる)
英語の「dig」から来ているこの表現は、文字通り「掘る」という意味で、音楽の世界では隠れた名盤や知られざるアーティストを発掘することを指す。まさに宝探しのような行為だ。

この世界には、あなたがまだ知らない素晴らしい音楽が無数に存在している。1980年以降だけでも、ロック、パンク、メタル、そしてその無数の派生ジャンルが生まれ続けており、毎日のように新しいバンドがデビューし、ベテランたちが新作をリリースしている。これは音楽ファンにとって幸福な状況であると同時に、選択肢が多すぎるという贅沢な悩みでもある。

音楽をディグることのメリットは計り知れない。

  • まだ誰も気づいていない再考バンドを発見できる快感
  • 新しいジャンルの扉が開かれる瞬間の興奮
  • 自分だけの音楽的嗜好を確立

メインストリームに流されることなく、真に自分の心に響く音楽を見つけることこそが、音楽ファンとしての醍醐味と言えるだろう。さて、あなたは普段どのような方法で新しい音楽を探しているだろうか?
この記事では、最新のAI技術を駆使した方法から、昔ながらの(時として非効率な)アナログな手法まで、古今東西のディグる方法を網羅的に紹介していく。現代から過去へと時を遡りながら、それぞれの手法を採点形式で検証してみよう。

採点方法

3項目+総合点を★5段階で評価

  • ヒット率 :この方法で新しい音楽を発見できる確率
  • 意外性  :まったく予想外のジャンルや音楽性の良作をディグる確率
  • 費用・労力:費用や労力(調査や行動)がかからない程高評価
  • 総合評価 :上記3項目

現代の音楽をディグる方法

1. AIを活用したレコメンデーションサービス:未来の音楽発見術

サブスクリプションサービスのアルゴリズム(Spotify、Apple Music等)

ヒット率 : ★★★★☆
意外性  : ★★★☆☆
費用・労力: ★★★★☆
総合評価 : ★★★★☆

現代音楽探索の最前線に君臨、現代の音楽ディグの定番・常識なのが、AIアルゴリズムを駆使したレコメンデーションサービスだ。
SpotifyのDiscover Weekly、Apple MusicのFor You、そしてYouTube Musicのミックスリストなど、機械学習が生み出す音楽の出会いは、時として人間の予想を遥かに超える精度を見せる。

これらのサービスは、あなたの再生履歴、スキップ率、プレイリストの傾向、そして類似ユーザーの嗜好までを分析し、「あなたが好きそうな」音楽を提案してくる。恐ろしいほど的確な時もあれば、「なぜこれを?」と首をかしげる選曲もあるが、それもまた一興だ。

特にSpotifyのアルゴリズムは秀逸で、メタルを聞いていたのに突然ジャズフュージョンを提案してきて、それが意外にもハマってしまうという魔法のような体験を提供してくれる。ただし、アルゴリズムの罠にはまって音楽的視野が狭くなるリスクもあるため、時には意図的に異なるジャンルを聞くことをお勧めする。

2. SNS・コミュニティベースのディグり方:デジタル時代の口コミ革命

X(旧Twitter)とYouTubeの力

ヒット率 : ★★★☆☆
意外性  : ★★★★☆
費用・労力: ★★★☆☆
総合評価 : ★★★☆☆

SNSプラットフォームは現代の音楽発見において重要な役割を果たしている
特にX(旧Twitter)では、音楽ファンや業界関係者が日々新しいアーティストについてつぶやき、YouTubeでは無名バンドから有名アーティストまでが平等に動画を投稿している。

YouTubeのレコメンデーション機能は特に侮れない。深夜にメタルの動画を見ていたら、気がつくと70年代のプログレッシブロックのライブ映像を見ていた、という経験は多くの音楽ファンが持っているはずだ。
X(旧Twitter)では、音楽ライターやレーベル関係者、そして熱心なファンたちがリアルタイムで情報を共有している。特に海外のインディーレーベルやアンダーグラウンドシーンの情報は、SNSでなければ得られないものも多い。

3. 専門ウェブサイトや音楽書籍:知識の結晶化された智慧

ヒット率 : ★★★☆☆
意外性  : ★★★☆☆
表・労力 : ★★☆☆☆
総合評価 : ★★★☆☆

音楽専門サイトや雑誌は長年にわたって音楽発見の重要な情報源だった。
『BURRN!』『YOUNG GUITAR』『CROSSBEAT』などの雑誌は、編集者の厳選された情報と深い洞察を提供してくれる。特に特集記事では、一つのジャンルやシーンを深掘りすることで、普段は接点のないアーティストとの出会いが生まれる。

海外アーティストの音楽を専門に扱うウェブサイトもまた新しい音楽をディグるために従来から選択されてきた手法だ。
[Pitchfolk(ピッチフォーク)」は世界中で利用されている量・質とも最高峰と言えるだろう。直接日本語で読むことはできないが、和訳された情報が日本の音楽メディアで紹介、またファンが独自に翻訳して共有したりすることがよくある。

Pitchfork(ピッチフォーク)
  • 詳細で深いレビュー: レビューが詳細、音楽的背景、歴史的文脈、アーティスト意図など深く掘り下げて解説。
  • 独自の視点と影響力: インディー/オルタナロックを中心に、新しい才能の発掘や特定のジャンルに対する深い洞察力
  • 豊富なコンテンツ: レビュー、インタビュー、特集、ニュース、ビデオなど多岐にわたるコンテンツを提供。
  • ベストリスト: 年間ベストや各年代ベストアルバムなど、キュレーションされたリストが高く評価。
  • 言語: 直接日本語不可。和訳情報が音楽メディアで紹介、ファン独自に翻訳して共有などがある。

ただし、これらの媒体には編集者の主観が大きく反映される側面がある。
メインストリーム寄りになりがちな傾向もあり、真のアンダーグラウンドな音楽にはなかなか出会えないかもしれない。それでも、音楽の基礎知識を身につけるには最適な方法だ。

旧来~現代、変わらず使用される音楽をディグる方法

4. 好きなアーティスト回り:音楽的人脈を辿る探偵術

ヒット率 : ★★★★☆
意外性  : ★★★☆☆
費用・労力: ★★☆☆☆
総合評価 : ★★★★☆

お気に入りのアーティストを起点として、その周辺を探索する方法は非常に効率的だ。
ゲスト参加、プロデューサー、同じレーベル、ツアーサポート、過去のバンドメンバーなど、様々な「つながり」を辿ることで新しい音楽に出会える

特にメタルシーンでは、この方法が威力を発揮する。有名ギタリストがゲスト参加したアルバム、お気に入りのドラマーが過去に在籍していたバンド、同じプロデューサーが手がけた作品など、音楽的DNA鑑定のような精密さで好みに合う音楽を発見できる。

また、アーティスト自身がインタビューで言及するお気に入りのバンドや影響を受けた音楽も貴重な情報源だ。ただし、時として「影響を受けた」と言いながら全く似ていない音楽を挙げるアーティストもいるので、過度な期待は禁物だ。

当サイト(ディグルートmusic)では、検索できる個別のアーティストページ、アルバムページで関連バンド(サイドプロジェクトやバンドの影響元や影響先)を内部リンクでディグる事が出来ます。またレーベルやプロデューサーで条件を絞ったアルバム検索もできる仕組みを採用しています。アーティスト回りでディグるならトップページからご利用ください。

5. 人からの口コミ・おすすめ:人間関係という名の音楽ネットワーク

ヒット率 : ★★☆☆☆(人間関係により★★~★★★)
意外性  : ★★☆☆☆(基本マニアックなもの勧めない)
費用・労力: ★★★★☆
総合評価 : ★★★☆☆

友人、同僚からの音楽の推薦は、最も古典的な音楽発見方法の一つだ。
あなたの好みを知っている人からのレコメンデーションは、アルゴリズムよりも的確なことも稀にあるが、個人的にはハズレにあたることが多く感じる。

音楽仲間との情報交換は貴重だ。「これ絶対好きだと思う」と言われて渡されたCDが、その後の音楽人生を変えるきっかけになることもある。また、世代の違う人からの推薦は、自分では決して辿り着かなかったであろう音楽との出会いを提供してくれる。

ただし、人間関係に依存する方法でもあるため、周りに音楽好きがいない環境では機能しない。また、友人の「絶対いいから!」という熱い推薦が外れた時の気まずさは、音楽ファンなら誰もが経験したことがあるはずだ。

6. ライブハウスに行く:現場でしか味わえない生の発見

ヒット率 : ★★★☆☆
意外性  : ★★★★☆
費用・労力: ★☆☆☆☆(地方だと★、都心でも費用かかる★★)
総合評価 : ★★★★☆

ライブハウスでの音楽発見は、最も原始的でありながら最も確実な方法だ。特に対バン形式のライブでは、目当てのバンド以外の演奏も聞くことになり、予期せぬ出会いが生まれることが多い

生演奏の迫力は録音では伝わらない魅力があり、CDでは平凡に聞こえるバンドがライブでは圧倒的な存在感を放つこともある。また、ライブハウスの雰囲気や観客の反応も含めて、音楽を体験できるのは現場ならではの醍醐味だ。

ただし、時間とお金がかかり、外れのライブに当たった時のダメージは大きい。また、好みに合わないジャンルのライブハウスに足を向けることは稀であるため、音楽的な幅を広げるという点では限界がある。

現代ではほぼ失われた音楽をディグる方法

7. レコードショップ・CDショップでの試聴と紹介文:店員という名の音楽コンシェルジュ

ヒット率 : ★★★☆☆
意外性  : ★★★☆☆
費用・労力: ★☆☆☆☆(CDショップの減少・縮小により)
総合評価 : ★★☆☆☆

レコードショップやCDショップは、かつては音楽収集のスタンダードであり、新しい音楽をディグるうえでも最も定番な収集場所であった。
しかし近年ではデジタル化が進みショップでCD購入による音楽の入手よりもデジタルミュージックのストリーミング再生が主流になったこともありショップ数が激減している。

従来のCDショップでのディグにおいて特に試聴コーナーが重要だった。
ジャケットに惹かれたけれど音は未知数、そんな時に数分間の試聴と店員の適格なレビューとおススメ曲をもとにsたらしい音楽を入手するといった流れが定番だった。ただし、最近では試聴機を設置している店舗は減っており、尚且つ現代の主流である音楽ストリーミングサービスでは無料プランでさえ膨大な曲の試聴が出来る、店舗に足を運ぶ労力すら要らないといったように完全に数段階の下位互換になった印象となっている。

補足:上級者御用達? ジャケ買い:視覚的直感に賭ける危険なギャンブル

ヒット率 : ★☆☆☆☆
意外性  : ★★★★★
費用・労力: ★☆☆☆☆(CDショップ減+購入必須)
総合評価 : ★★☆☆☆

従来のCDショップを利用した新しい音楽をディグる方法の1つとして「ジャケ買い」なるものが存在していた。
「ジャケ買い」は音楽ファンなら一度は経験したことがあるであろう、最もスリリングな音楽発見方法だ。アルバムジャケットのデザインや雰囲気だけを頼りに音楽を購入する、まさに音楽界のギャンブルである。

成功した時の喜びは格別だ。ジャケットのイメージと音楽が完璧にマッチしていた時の感動は、計算された出会いでは味わえない特別なものがある。特にプログレッシヴロックやドゥームメタルなどのジャンルでは、ジャケットアートワークと音楽性が密接に関連していることが多く、ジャケ買いの成功率が比較的高い。

しかし、失敗のリスクも高い。美しいジャケットに騙されて、中身が期待外れということは珍しくない。特に最近では、ジャケットだけプロが手がけたような素人バンドも多く、ジャケ買いはより危険な行為となっている。それでも、このギャンブル性こそがジャケ買いの醍醐味でもある。

当サイト(ディグルートmusic)では、トップページ上にイメージからディグるコンテンツを採用しています。
アーティスト名を表記せずに、アルバムに似たイメージ画像と翻訳邦題表記の視覚的な印象のみでディグるコンテンツなので、資格で厳密にはジャケ買い・ジャケ選びとは似て非なるものですが、雰囲気だけ味わうのであれば是非トップページからご利用ください。

8.ラジオという忘れられた音楽発見装置

ヒット率 : ★☆☆☆☆
意外性  : ★★★☆☆
費用・労力: ★★★☆☆
総合評価 : ★☆☆☆☆

デジタル時代に忘れがちだが、ラジオも従来では今よく音楽発見ツールとして利用されていた。

1980年代後半ではカレッジ・ラジオ(college radio)という大学のキャンパス内や学園都市に開設される学生運営のFMラジオ局での人気を皮切りに世界的に有名なバンドにまでなりがったバンドすらいる。U2やThe Cure、The Smithなどがその代表だであり、それらのバンドはカレッジ・ロックという括りのジャンルで語られるほどラジオは新しい音楽の宝庫だった。

現代ではFMラジオなどでディグるというったことは効率性に面からも皆無になっており、また各社音楽ストリーミングサービスなどが機能の一部としてラジオチャンネルを取り入れている。言葉は悪いが情報ツール脇役的な存在感と位置づけなので、ラジオ単体でディグるということはほとんど無くなったといって良いだろう・

まとめ:音楽発見の無限の可能性

以上、古今東西の音楽をディグる方法を紹介してきたが、結局のところ最も重要なのは「開かれた心」を持つことだ。どの方法を使うにせよ、先入観や偏見を捨て、新しい音楽に対して素直な気持ちで向き合うことが、素晴らしい出会いを生む秘訣である。

現代では、これらの方法を組み合わせることで、より効率的で楽しい音楽発見が可能になった。SpotifyでAIのレコメンデーションを受けつつ、気になったアーティストについてTwitterで情報収集し、関連アーティストを調べて、最終的にはライブを見に行く、といったハイブリッドなアプローチが理想的だ。

新しい音楽との出会いは、人生を豊かにしてくれる。知らなかったジャンルに目覚めたり、忘れていた感情を呼び起こすような楽曲に出会ったり、音楽を通じて新しい友人ができたり。その瞬間の興奮と喜びは、音楽ファンであることの最大の特権と言えるだろう。

さあ、あなたも今日から本格的な音楽ディガーとして、まだ見ぬ音楽の宝物を探しに出かけてみてはいかがだろうか。きっと、あなたの人生を変えるような一枚が、どこかで待っているはずだ

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