各ジャンル解説
プログレッシヴ・ロック
Progressive Rock
Progressive Rock
1960年代後半から1970年代にかけて英国を中心に発展したロックのサブジャンル。様々な音楽要素を取り入れ長尺で複雑な楽曲構成、高度な演奏技術、コンセプト・アルバムの多用などが特徴。ピンク・フロイド、キング・クリムゾンなどが代表的。その革新性と表現の幅広さから、近年のメタルやポストロックなど、多岐にわたるジャンルのアーティストがプログレ的要素を取り入れ、多様なサウンドを生み出している。
パンク・ロック
Punk Rock
Punk Rock
1970年代中頃にイギリスとアメリカで勃発。スリーコード中心のシンプルな構成、短く速いテンポ、反体制的な歌詞が特徴。既存の音楽への反発からDIY精神を重視し、アナーキーなファッションも流行。代表的なバンドはセックス・ピストルズ、ザ・クラッシュなど。
ポストパンク / ニューウェイヴ
Post Punk / New Wave
Post Punk / New Wave
1970年代後半のパンクムーブメント後に登場。パンクのDIY精神を受け継ぎつつ、より芸術的・実験的なサウンドを追求。レゲエやファンク、エレクトロニクスなどの要素を取り入れ、多様なスタイルが生まれた。トーキング・ヘッズ、ジョイ・ディヴィジョンが著名。
NWOBHM
New Wave of British Heavy Metal
New Wave of British Heavy Metal
1970年代後半から80年代初頭のイギリスで隆盛。伝統的なヘヴィメタルの要素に、パンクのエネルギーとスピード感を融合させた。ツインギターによる複雑なリフとソロ、ハイトーンボーカルが特徴。アイアン・メイデンやジューダス・プリーストが代表格。
グラムメタル / L.A.メタル
Glam Metal / L.A. Metal
Glam Metal / L.A. Metal
1980年代に特にLAで人気を博したヘヴィメタルの一種。キャッチーなメロディ、ギターソロ、派手なルックス(化粧、長髪、レザーなど)が特徴。パーティーロック的なテーマが多く、エンターテイメント性が重視された。モトリー・クルー、ボン・ジョヴィなどが代表。
ハードコアパンク
Hardcore Punk
Hardcore Punk
1970年代後半から80年代初頭にかけてのパンク・ロックの派生。パンクよりもさらに高速かつ攻撃的で、短い曲、叫ぶようなボーカル、過激な歌詞が特徴。ストレートな怒りや社会批判を表現し、DIY精神がより色濃く反映された。バッド・ブレインズやブラック・フラッグがその典型。
スラッシュメタル
Thrash Metal
Thrash Metal
1980年代初頭にNWOBHMやハードコアパンクから派生。速いテンポ、複雑なギターリフ、強力なドラミングが特徴。社会問題や政治批判をテーマにした歌詞が多く、攻撃的でアグレッシブなサウンドを追求。メタリカ、スレイヤーなどがこのジャンルを牽引した。
テクニカルハードロック
Technical Hard Rock
Technical Hard Rock
1980年代後半から1990年代前半にかけて隆盛したハードロックの一種で、バンドメンバー、特にギタリストの高度な演奏技術や複雑な楽曲構成を特徴とし、しばしばフュージョンやクラシック音楽の要素も取り入れられる。Mr. Big、Extreme、Van Halen(エディ・ヴァン・ヘイレン)などが代表的。
デスメタル
Death Metal
Death Metal
1980年代半ばにアメリカを中心に発展したエクストリームメタル。低音重視の轟音ギター、複雑なリフ、速いドラム、グロウル(咆哮)ボーカルが特徴。死、暴力、ホラー、反宗教的なテーマを歌詞にする傾向がある。デスがジャンルの基礎を築き、カンニバル・コープが代表格。
グラインドコア
Grindcore
Grindcore
1980年代半ばにイギリスで誕生したエクストリームメタルのサブジャンル。極端に速いテンポ、ブラストビート、ガテラルボイス(獣のような唸り声)、非常に短い曲が特徴。社会批判や政治的メッセージ、ゴア表現などが歌詞のテーマとなることが多い。ナパーム・デスがパイオニア。
パワーメタル
Power Metal
Power Metal
1980年代半ばにドイツとアメリカで台頭。クリーンなハイトーンボーカル、疾走感のあるドラム、メロディアスで叙情的なギターソロが特徴。ファンタジー、神話、歴史などをテーマにした歌詞が多く、勇壮で壮大なサウンドが魅力。ハロウィン、ブラインド・ガーディアンなどが有名。
1990年代オルタナティブ・ロック
Alternative Rock (1990s)
Alternative Rock (1990s)
1990年代にメインストリームで人気を博したロックの総称。インディーズの精神と実験性を持ち込み、多様なサブジャンルを含む。当サイトにおいてはグランジ、ブリットポップ、ノイズロック、カレッジロック、シューゲイザーなどもここに属する。既存のロックの枠にとらわれない自由な発想が特徴。
カレッジ/ インディーロック
College / Indie Rock
College / Indie Rock
1980年代を中心に、大学のラジオ局で人気を集めたインディーズ系のロック。メジャーレーベルに属さないバンドが多く、商業主義に囚われない自由な音楽性が特徴。メロディックな要素とアコースティックな響きを併せ持つバンドも多い。R.E.M.が初期を代表する。
ノイズロック
Noise Rock
Noise Rock
1980年代に登場。不協和音、フィードバック、ディストーションを多用し、意図的に「ノイズ」を音楽的要素として取り入れた。破壊的で実験的なサウンドが特徴で、聴く者に不快感を与えることを厭わない。ソニック・ユースが代表的なバンドとして知られる。
シューゲイザー/ドリームポップ
Shoegaze/Dream Pop
Shoegaze/Dream Pop
1980年代後半から90年代初頭にイギリスで発展。分厚いギターエフェクトによる浮遊感のあるサウンド、何層にも重ねられたボーカル、霞がかったような音像が特徴。夢見心地で陶酔的な雰囲気を醸し出す。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインがこのジャンルを確立した。
グランジ
Grunge
Grunge
1990年代初頭にシアトルを中心に隆盛。パンクの生々しさとヘヴィメタルの重厚感を融合させた。ダーティなギターサウンド、内省的・厭世的な歌詞、飾らないファッションが特徴。既存の音楽シーンへの不満を背景に、ニルヴァーナがムーブメントの象徴となった。
ラップロック / ファンクメタル
Rap Rock / Funk Metal
Rap Rock / Funk Metal
1980年代後半から90年代に登場。ヒップホップのラップボーカルやリズムと、ロック/メタルのギターリフや構成を融合させた。グルーヴ感を重視し、ファンキーな要素を取り入れるバンドも多い。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンがその代表例として挙げられる。
ブリットポップ
Britpop
Britpop
1990年代半ばのイギリスで隆盛。ギターポップを基盤とし、英国的なメロディ、ポップでキャッチーな楽曲が特徴。当時のアメリカのグランジに対し、自国の文化やアイデンティティを前面に出した。オアシス、ブラーが二大巨頭として人気を博した。
グルーヴメタル
Groove Metal
Groove Metal
1990年代初頭にスラッシュメタルから派生。スラッシュメタルのスピード感を落とし、より重く、ミドルテンポでグルーヴ感を強調したリフが特徴。重厚なリズムセクションとアグレッシブなボーカルが持ち味。パンテラがこのジャンルの代表的な存在である。
ポップパンク
Pop Punk
Pop Punk
1990年代以降に人気を博したパンク・ロックのサブジャンル。パンクのエネルギーと簡潔さに、ポップでキャッチーなメロディとコーラスを融合させた。ティーンエイジャーの日常や恋愛をテーマにした歌詞が多く、幅広い層に受け入れられた。グリーン・デイ、ブリンク 182が代表。
プログレッシヴ・メタル
Progressive Metal
Progressive Metal
1980年代後半にプログレッシヴ・ロックとヘヴィメタルの融合として誕生。複雑な楽曲構成、変拍子、高度な演奏技術、叙事詩的な歌詞が特徴。サウンドの多様性と実験性を追求し、壮大で知的な響きを持つ。ドリーム・シアターやトゥールがその代表格。
インダストリアル
Industrial
Industrial
1970年代中頃にイギリスとドイツで誕生。ノイズ、電子音、サンプリング、金属的なパーカッションなどを多用し、機械的で冷たい雰囲気を醸し出す。社会の暗部やディストピアをテーマにした歌詞が多く、反体制的なメッセージを持つ。トレント・レズナーのナイン・インチ・ネイルズが有名。
ニュースクール・ハードコア
Newschool Hardcore
Newschool Hardcore
1990年代に登場したハードコアパンクの進化形。メタリックなギターリフとより重くタイトなドラムサウンドが特徴。精神的な強さ、連帯、社会問題への意識をテーマにした歌詞が多く見られる。また、メロディや叙情性を強く押し出したバンドも存在し、多様なスタイルを持つ。ヘイトブリードやテイクンなどがこのジャンルの代表。
エモ・ロック
Emo Rock
Emo Rock
1980年代半ばのハードコアパンクから派生。感情的な歌詞と歌唱法、メロディックなギターリフが特徴。内省的で個人的な感情表現が重視され、衝動的でありながら繊細さも併せ持つ。サニーデイ・リアル・エステートやジミー・イート・ワールドが広く知られた存在。
ニューメタル / ラップメタル
Nu Metal / Rap Metal
Nu Metal / Rap Metal
1990年代中頃に人気を博したヘヴィメタルのサブジャンルで、ダウンチューニングされた重厚なギターリフ、ラップボーカル、スクラッチやサンプリングといったDJ要素が積極的に導入され、グルーヴ感を重視したリズム隊がサウンドの基盤を築いた。音楽だけでなく、ストリートウェアやスポーツウェアを取り入れたファッションも若者を中心に広まった。コーンやリンキン・パークなどが中心的な存在。
ポストロック / マスロック
Post Rock / Math Rock
Post Rock / Math Rock
1990年代に登場。ロックの楽器編成を用いつつ、歌詞や典型的な構成に囚われず、音響的・構造的な探求を重視。ポストロックはインストゥルメンタルで壮大なサウンドスケープを描き、マスロックは複雑な拍子と反復するリフが特徴。トータスやドン・キャバレロが代表的なバンドとして知られる。
メロディック・デスメタル
Melodic Death Metal
Melodic Death Metal
1990年代初頭にスウェーデンで発展。デスメタルの攻撃性に、メロディックなギターリフとハーモニー、クリーンボーカルを融合。叙情的な要素と疾走感を兼ね備え、哀愁を帯びたサウンドが特徴。イン・フレイムスがそのパイオニア。
2000年代オルタナティブ・ロック
Alternative Rock (2000s)
Alternative Rock (2000s)
2000年代に多様化したロックの総称。1990年代のオルタナティヴ精神を引き継ぎつつ、ポストグランジやポストパンク・リバイバルやガレージロック、そしてインディーロックまで内包した、様々なサブジャンルで構成される。より洗練されたサウンドと多様な音楽性が特徴。
ポストグランジ
Post Grunge
Post Grunge
1990年代後半から2000年代に登場。グランジの重厚感と内省的な雰囲気を残しつつ、よりメロディックでラジオフレンドリーなサウンドに。怒りや絶望感よりも、個人的な苦悩や希望を描く傾向がある。クリードやニッケルバックが代表的。
2000年代UKロック
UK Rock (2000s)
UK Rock (2000s)
2000年代のイギリスで人気を博したロックの総称。1990年代のオルタナ、グランジ、ブリットポップの影響を受けつつ、壮大でスタジアムロック的なサウンドから、より実験的な要素まで多様。叙情的で内省的な歌詞も特徴。コールドプレイやミューズがこの時代を象徴するバンドとして人気を博した。
ガレージ / ポストパンク・リバイバル
Garage / Post Punk Revival
Garage / Post Punk Revival
2000年代初頭に起こったムーブメント。1960年代のガレージロックの粗削りなサウンドと、1970年代後半のポストパンクの実験性や神経質さを再評価。シンプルで衝動的なギターロックが特徴。ザ・ストロークスやザ・リバティーンズが代表的。
ニューレイヴ / ダンスロック
New Rave / Dance Rock
New Rave / Dance Rock
2000年代後半にイギリスで登場。ロックのバンドサウンドに、エレクトロニックミュージックの要素(シンセサイザー、ダンスビート)を融合。蛍光色のファッションやパーティー的な雰囲気が特徴で、ダンスフロアを意識した楽曲が多い。クラクソンズなどが人気を博した。
2000年代インディーロック
Indie Rock (2000s)
Indie Rock (2000s)
2000年代に多様化したインディーズ系のロック。特定のサウンドに縛られず、実験性や創造性を追求。フリーフォークやニューゲイズなどより洗練されたプロダクションや多様な音楽的要素を取り入れた。アーケイド・ファイアやアニマル・コレクティヴのような幅広いサウンドに特徴を持つバンドが登場した。
スクリーモ
Screamo
Screamo
1990年代後半にエモから派生。絶叫ボーカル(スクリーム)とメロディックな要素が激しく交錯するダイナミックなサウンドが特徴。感情の爆発を伴う激しい演奏と、内省的な歌詞が融合する。ザ・ユーズドやアンダーオースなどがその代表格。
マスコア
Mathcore
Mathcore
1990年代にハードコアパンクとマスロックから発展。複雑な変拍子、不協和音、カオティックな構成、そしてデスボイスやスクリームが特徴。極めて技術的で予測不能な展開を持ち、聴き手に強烈なインパクトを与える。コンヴァージやザ・ディリンジャー・エスケイプ・プランが先駆者。
メタルコア
Metalcore
Metalcore
1990年代にハードコアとメタルの融合として確立。ヘヴィなリフとブレイクダウン、スクリーム/グロウルとクリーンボーカルの切り替えが特徴。感情的な歌詞とアグレッシブな演奏を両立し、近年人気を博している。キルスウィッチ・エンゲイジがその代表。
ポストハードコア
Post Hardcore
Post Hardcore
2000年代後半以降に多様な進化を遂げたハードコアの派生ジャンル。ハードコアのアグレッシブさを保ちつつ、シンセサイザーやエレクトロニクスを取り入れ、クリーンボーカルとシャウトを織り交ぜる。ハードコアともメタルとも異なる、現代的で実験的なサウンドが特徴。ブリング・ミー・ザ・ホライズンがこのジャンルを代表する。
デスコア
Deathcore
Deathcore
2000年代初頭にデスメタルとメタルコアの融合として登場。デスメタルのグロウルやブラストビート、ブルータルなリフに、メタルコアのブレイクダウンやハーモニクスを加えた。極めて重く、アグレッシブなサウンドが特徴。スーサイド・サイレンスが代表。
ジェント
Djent
Djent
2000年代後半に発展したプログレッシヴ・メタルのサブジャンル。低音チューニングされたギターによるミュートリフ(パームミュート)で、重く、リズミカルで、パーカッシブなサウンドが特徴。ポリリズムや複雑な拍子を多用する。メシュガーがジャンルの礎を築いた。
オルタナロック(2010年代~)
Alternative Rock (Since the 2010s)
Alternative Rock (Since the 2010s)
2010年代以降、さらに多様化したロックの総称。エレクトロニクスとの融合、よりポップな要素の取り込み、多様なサブジャンルのクロスオーバーが特徴。メジャーシーンでも実験的なサウンドが受け入れられ、ジャンルの垣根が低くなった。トゥエンティ・ワン・パイロッツなどが成功を収めた。
メタル(2010年代)
Metal (Since the 2010s)
Metal (Since the 2010s)
2010年代以降に多様化したヘヴィメタル全般を指す。デスコア、ジェント、メタルコアなどが主流となり、さらにデスラッシュやプログレッシヴ要素やニューメタルリバイバルな要素との融合も進んだ。新世代のバンドが多様なサウンドを生み出し、ジャンルの境界がますます曖昧になった。