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【ロックフェス特集第1弾】フジロック・サマソニのヘッドライナーを海外主要フェスと比較

フェスバブル崩壊の渦中で見えてきた現実

2025年、コーチェラフェスティバルの開幕を皮切りに、海外主要フェスの開催が続々と始まっている。6月末時点でも多くのフェスが盛況に開催されているが、その一方で各国のフェスファンからは「ラインナップが弱い」「昔の方が良かった」といった声も聞こえてくる。

そんな中、わが日本でも夏の2大フェスティバル、フジロックフェスティバルとサマーソニックの開催が目前に迫り、ラインナップ・ヘッドライナーが出そろった。しかし、蓋を開けてみれば予想通り(?)の結果となった。

この記事では、あえて近年「ラインナップが弱い」と言われ続けている国内ロックフェスと海外主要フェスの比較を行う。同時に、現代ロックフェスシーンに関するポジティブ・ネガティブな意見を拾い上げ、勝手に独自の見解を述べていこう。正直に言うと、筆者としてはかなり物足りないキャスティングだと感じているが、できるだけ冷静に分析してみたい。

目次

2025年国内大型音楽フェス2選

フジロックフェスティバルの基本情報

フジロックフェスティバルは1997年に富士山麓で始まった日本最大級の野外音楽フェスティバルだ。現在は新潟県の苗場スキー場で開催され、毎年7月下旬に3日間にわたって行われる。

開催概要

  • 略称:フジロック
  • 開催時期:7月25日(金)〜27日(日)
  • 会場:新潟県湯沢町 苗場スキー場
  • 観客動員数:約12万人(3日間合計)
  • ジャンル:ロック、オルタナティブ、エレクトロニカ、ワールドミュージック

フジロックの魅力は何と言っても自然に囲まれた環境での音楽体験だ。山間部の清涼な空気の中で楽しむ音楽は格別で、キャンプサイトでの宿泊も含めて「フェス体験」を提供している。近年はエレクトロニカやワールドミュージックにも力を入れており、多様性を打ち出している。

2025年のヘッドライナーは、Fred Again..、VULFPECK、Vampire Weekendの3組。エレクトロニカの新星Fred Again..の起用は時代を象徴する選択だが、ロックファンからは「これがロックフェスのヘッドライナーか?」という声も聞こえてくる。

サマーソニックフェスティバルの基本情報

サマーソニックは2000年に始まった都市型フェスティバルで、千葉(ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ)と大阪(万博記念公園)の2会場で同時開催される。

開催概要

  • 略称:サマソニ
  • 開催時期:8月16日(土)〜17日(日)
  • 会場:千葉・ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ、大阪・万博記念公園
  • 観客動員数:約20万人(2日間・2会場合計)
  • ジャンル:ロック、ポップ、R&B、ヒップホップ、エレクトロニカ

サマーソニックの特徴は都市部でのアクセスの良さと、屋内外の多彩なステージ構成だ。特に屋内ステージでは音響設備が充実しており、海外アーティストの来日公演としても高い評価を受けている。

2025年のヘッドライナーは、Fall Out Boy、Alicia Keys、..の2組。Fall Out Boyは確かにヘッドライナーとしての実績は十分だが、「2025年のヘッドライナーとして果たして…」という疑問も湧く。Alicia Keysは素晴らしいアーティストだが、ロックフェスのヘッドライナーとしては少々畑違いな印象も否めない。

2025年海外大型音楽フェス13選

オールジャンル系

Coachella Valley Music and Arts Festival 2025

  • 略称:コーチェラフェス
  • 開催時期:4月11日〜13日、18日〜20日
  • 会場:カリフォルニア州インディオ
  • 観客動員数:約25万人(2週間合計)
  • ジャンル:ロック、ポップ、ヒップホップ、インディー、EDM(2025年は全体の約4割)

世界最大級の音楽フェスティバルとして知られるコーチェラ。ファッションやアートの発信地としても注目され、セレブリティの参加でも話題になる。2025年のヘッドライナーも話題性は十分だが、「コーチェラらしさ」という点では物足りなさもある。

Glastonbury Festival 2025

  • 略称:グラストンベリーフェス
  • 開催時期:6月25日〜29日
  • 会場:イングランド・サマセット州
  • 観客動員数:約20万人
  • ジャンル:ロック、ポップ、エレクトロニカ、ワールドミュージック

イギリス最大の音楽フェスティバルで、世界中のアーティストが「一度は出演したい」と憧れる聖地。泥だらけになりながらも楽しむ「ガラスト体験」は伝説的だ。

Leeds & Reading Festival 2025

  • 略称:レディングフェス
  • 開催時期:8月22日〜24日
  • 会場:リーズ・レディング(イングランド)
  • 観客動員数:約20万人(2会場合計)
  • ジャンル:ロック、オルタナティブ、パンク、メタル

イギリスの代表的なロックフェスティバル。特に新進気鋭のロックバンドの登竜門として知られ、多くのバンドがここからブレイクしている。

Bonnaroo Music and Arts Festival 2025

  • 略称:ボナルーフェス
  • 開催時期:6月12日〜15日
  • 会場:テネシー州マンチェスター
  • 観客動員数:約8万人
  • ジャンル:ロック、ジャム、エレクトロニカ、ヒップホップ

アメリカ南部の田舎で開催される「ボナルー体験」は独特で、コミュニティ感の強いフェスティバルとして愛されている。

Lollapalooza Festival 2025

  • 略称:ロラパルーザフェス
  • 開催時期:7月31日〜8月3日
  • 会場:イリノイ州シカゴ
  • 観客動員数:約40万人(4日間合計)
  • ジャンル:オルタナティブ、ロック、ヒップホップ、エレクトロニカ

シカゴの都市部で開催される大型フェスティバル。オルタナティブロックの殿堂として始まったが、現在は多様なジャンルを扱う。

Pinkpop Festival 2025

  • 略称:ピンクポップフェス
  • 開催時期:6月14日〜16日
  • 会場:オランダ・ランドグラーフ
  • 観客動員数:約18万人
  • ジャンル:ロック、ポップ、オルタナティブ

オランダで開催される老舗フェスティバル。ヨーロッパ最古のポップフェスとして知られ、コンパクトながらも質の高いラインナップで定評がある。

Roskilde Festival 2025

  • 略称:ロスキレフェス
  • 開催時期:6月26日〜7月6日
  • 会場:デンマーク・ロスキレ
  • 観客動員数:約13万人
  • ジャンル:ロック、エレクトロニカ、ワールドミュージック

デンマーク最大の音楽フェスティバル。北欧らしい環境意識の高さと、実験的なアーティストの起用で知られる。

ロック・ヘヴィミュージック特化系

Download Festival 2025

  • ダウンロードフェス
  • 開催時期:6月13日〜15日
  • 会場:イングランド・ドニントン
  • 観客動員数:約11万人
  • ジャンル:ロック、メタル、ハードコア

イギリス最大のロック・メタル専門フェスティバル。「ロックの聖地」ドニントンで開催され、重厚なサウンドが響き渡る。

Rock am Ring / Rock im Park 2025

  • 略称:ロックアムリング
  • 開催時期:6月6日〜8日
  • 会場:ドイツ・ニュルンベルク近郊
  • 観客動員数:約17万人(2会場合計)
  • ジャンル:ロック、メタル、オルタナティブ

ドイツで開催される双子フェスティバル。ヨーロッパ最大級のロックフェスとして、毎年強力なラインナップを組む。

メタル特化系

Hellfest Summer Open Air 2025

  • 略称:ヘルフェスト
  • 開催時期:6月19日〜22日
  • 会場:フランス・クリソン
  • 観客動員数:約18万人
  • ジャンル:メタル、ハードコア、パンク

フランスで開催される世界最大級のメタルフェスティバル。極悪なラインナップで知られ、メタルファンにとっては「聖地巡礼」的な存在。

Wacken Open Air 2025

  • 略称:ヴァッケンオープンエア
  • 開催時期:7月31日〜8月2日
  • 会場:ドイツ・ヴァッケン
  • 観客動員数:約8万人
  • ジャンル:メタル、ハードロック

ドイツの小さな村で開催される世界最大のメタルフェスティバル。チケットは毎年即完売し、メタルファンの巡礼地として君臨している。

ヘッドライナー、参加ロックアーティスト比較

国内2大フェス+海外11フェスのヘッドライナーと主要な参加ロックバンドの比較

フジロックサマソニコーチェラグラストンベリーレディングボナルーロラパルーザピンクポップロスキレダウンロードロックアムリングヘルフェストヴァッケンオープンエア
日本日本米カリフォルニア州英サマセット州英リーズ/レディング米テネシー州米イリノイ州オランダデンマーク英ドニントン独ニュルンベルクフランス独ヴァッケン
ヘッドライナー
Fred Again..
VULFPECK
VAMPIRE WEEKEND




ヘッドライナー
Fall Out Boy
Alicia Keys





ヘッドライナー
Lady Gaga
Green Day
Travis Scott
Post Malone



ヘッドライナー
The 1975
Neil Young And The Chrome Hearts
Olivia Rodrigo



ヘッドライナー
Hozier
Bring Me The Horizon
Travis Scott




ヘッドライナー
Luke Combs
Tyler, The Creator
Olivia Rodrigo
Hozier



ヘッドライナー
Luke Combs
Olivia Rodrigo  
Korn
Rüfüs Du Sol
TWICE
Sabrina Carpenter
A$AP Rocky
ヘッドライナー
Justin Timberlake
Olivia Rodrigo
Muse




ヘッドライナー
Charli XCX
Olivia Rodrigo
Stormzy
Nine Inch Nails



ヘッドライナー
Green Day
Sleep Token
Korn




ヘッドライナー
Bring Me The Horizon
Slipknot
Korn




ヘッドライナー
Korn
Muse
Scorpions
Linkin Park



ヘッドライナー
Guns N’ Roses






その他ロック系
TYCHO
OK GO
The Hives








その他ロック系
YUNGBLUD
The Prodigy
Bloc Party








その他ロック系
Kraftwerk
The Prodigy
Misfits
Wezzer
Basement Jaxx






その他ロック系
Biffy Clyro
The Libertines
Franz Ferdinand
The Prodigy
Snow Patrol






その他ロック系
Limp Bizkit
Enter Shikari
The Kooks
Bloc Party







その他ロック系
VAMPIRE WEEKEND
Queens of the Stone Age
Megadeth
Modest Mouse







その他ロック系
Cage the Elephant
Foster the People
Wallows








その他ロック系
Korn
Weezer
Biffy Crylo
Kaiser Chiefs
The Last Dinner Party
Inhaler





その他ロック系
Deftones
Jinjer
Fontaines D.C.
Bright Eyes
Electric Callboy






その他ロック系
Weezer
Jimmy Eat World
Rise Against
Bullet for my Valentine
Spiritbox
Meshuggah
Jinjer
Opeth
Lorna Shore
Whitechapel
Sikth
その他ロック系
Weezer
A Day To Remember
Biffy Clyro
Bullet For My Valentine
Spiritbox
Falling In Reverse
In Flames
Rise Against
Jinjer
Lorna Shore
Sleep Token
その他ロック系
Spiritbox
Dream Theater
Judas Priest
Falling In Reverse
A Day To Remember
Motionless In White
Lorna Shore
WhiteChapel
Jinjer
Exodus
     
その他ロック系
Machine Head
Papa Roach
Gojira
Ministry
Within Temptation
Apocalyptica
Saxon
Obituary
Michael Schenker
August Burns Red
W.A.S.P

2025年の夏を彩る国内外の主要音楽フェスティバルのラインナップが続々と発表され、音楽ファンの間で熱い議論が交わされている。
今回は、国内2大フェスであるフジロックとサマーソニック、そして世界各地で開催される11の主要フェスティバル(下表)の間でのヘッドライナーと主要ロックバンドの顔ぶれを比較し、特に「ロック」というジャンルに焦点を当てた考察を深める。

世界の主要11フェス

オールジャンル系

  • コーチェラ
  • グラストンベリー
  • レディング
  • ボナルー
  • ロラパルーザ
  • ピンクポップ
  • ロスキレ

ロック系

  • ダウンロード
  • ロックアムリング

メタル系

  • ヘルフェスト
  • ヴァッケンオープンエア

国内フェス、率直に言って弱い…

まず率直に言ってロックを中心にとらえた場合、国内2大フェスのロック系ラインナップは海外の主要フェスティバルと比較して、ヘッドライナー級のアーティストにおいて物足りなさを感じざるを得ない

フジロックのヘッドライナーであるFred Again..、ULI-PECK、VAMPIRE WEEKEND、そしてサマーソニックのFall Out Boy、Alicia Keysは、ジャンルは多岐にわたるものの、純粋なロックバンドとしてのインパクトは海外フェスのそれと比べると「ヘッドライナーになり得るか微妙なライン」と言い切ってしまって良いだろう。

さらに残念な点として、国内2大フェスは連日参加することが多いにも関わらず各日のヘッドライナーに明確なジャンル分けがされていることだ。
例えばロックファンが連日でフェスを楽しむにはジャンル的な一貫性に欠けるという側面がある。1日単位で見ても「弱い」と感じるラインナップが、連日となるとさらに魅力が薄れてしまうというジレンマを抱えているのが現状だ。

オールジャンル系海外フェス、ヘッドライナーは強力だが…

一方、海外の11フェスティバルに目を向けるとどうだろう。
オールジャンル系フェスであるコーチェラ、グラストンベリー、レディング、ボナルー、ロラパルーザ、ピンクポップ、ロスキレ、確かに日本の2大フェスと同様にポップやヒップホップ系のヘッドライナーも目立つ。

そんな中でもKorn(ロラパルーザ、ピンクポップ)、Green Day(グラストンベリー、ダウンロード)、Bring Me The Horizon(ダウンロード、ロックアムリング)、Slipknot(ロックアムリング)、Muse(ピンクポップ、ヘルフェスト)、Nine Inch Nails(ロスキレ)、Guns N’ Roses(Wacken Open Air)といった、1990年代から2000年代にかけてロックやヘヴィミュージックを好んできた管理人としては、心躍るヘッドライナーや主要アクトが多数ラインナップされている。
所謂”旬”なバンドでは無いが現在においてもライブパフォーマンスにおいてはトップクラスの当たりヘッドライナー相当の超大物アーティストと言っていいのではないだろうか。
しかしながら、それでもなお、かつてのようなロックバンド一色といった熱狂を求める1990年代~2000年代のロック・ヘヴィミュージックファンとしては、オールジャンル系のフェスティバル全体に対して物足りなさを感じてしまうのは否めない。

ロック系・メタル系フェス、30代以上ロックファンには刺さりまくるが…

一方でロック系のダウンロード・フェスティバルとロック・アム・リング、そしてメタル超特化型のヘルフェストとヴァッケン・オープン・エアのラインナップは、まさに圧倒的である。
ダウンロードフェスとロック・アム・リングは、Green Day、Bring Me The Horizon、Slipknot、Kornといった現代のロックシーンを牽引するバンドから、Judas Priest、Bullet For My Valentine、Biffy Clyro、Weezerなど、幅広いジャンルと世代のロックバンドがバランス良く配置されている。

またメタル超特化フェスのヘルフェストとヴァッケン・オープン・エアでは、Korn、Muse、Guns N’ Roses、Scorpions、Linkin Park(ヘルフェスト)、Machine Head、Papa Roach、Gojira、Ministryといった、まさにメタルファンが望む「夢の共演」が実現している。これらのフェスに魅力を感じるのは、単なる「懐古厨おじさん」だからというだけでなく、純粋にロックやメタルの本質的な魅力を追求した結果、必然的に行き着く場所と言えるだろう。

まとめると、主観を多分に含みつつも、客観的に見ても、国内2大フェスにおけるロック系のラインナップが海外の主要フェスティバルに比べて弱いという事実は、完全には否定できない。
特にサマーソニックは、発足当初はダウンロードやロック・アム・リングのように、オルタナティブ系、パンク・ハードコア系、メタル系、売り出し中のバンドなど、ロック系のジャンルがバランス良く揃った魅力的なフェスであった。
フジロックとの差別化という観点からも、そして「懐古オジ」としても、再びロック系に強いサマーソニックの姿を見られることを強く願うばかりだ。世界のフェスシーンの多様性を享受しつつ、国内フェスのさらなる発展とロックラインナップの充実を切に期待する。

現代音楽フェスの課題

フェスバブル崩壊の現実

近年、音楽フェスティバル業界では「フェスバブル崩壊」という言葉が頻繁に聞かれるようになった。一体何が起こっているのか、様々な角度から検証してみよう。

否定的な意見:オワコン派の主張

ラインナップの弱体化

「昔のような大物が来ない」「ヘッドライナーが地味」「海外勢が減った」

確かに、2000年代のフジロックやサマソニを思い返すと、Radiohead、Red Hot Chili Peppers、Oasis、Linkin Park、Metallicaといった、誰もが知る大物アーティストが当たり前のように来日していた。当時と比較すると、現在のヘッドライナーの「格」に疑問を感じるのも無理はない。

チケット価格の高騰

「この出演者でこの値段は高すぎる」「コスパが悪い」

フジロックの1日券は現在約25,000円、サマソニは約15,000円と、決して安くない。これに交通費や宿泊費を加えると、軽く5万円を超える「投資」となる。その割にはラインナップが弱いという声も理解できる。

ジャンルの拡散

「ロックフェスなのにヒップホップやアイドルが多すぎる」「ジャンルがブレてる」

確かに、「ロックフェス」を名乗りながら、ヒップホップやアイドル、エレクトロニカが幅を利かせている現状に、オールドスクールなロックファンが困惑するのも当然だ。

若者離れ

「Z世代はフェスに行かない」「一緒に行く友達がいない」「配信で十分」

Spotify、Apple Music、YouTubeで簡単に音楽にアクセスできる現代において、わざわざ高い金を払って、暑い中で音楽を聴く必要があるのか?という疑問も理解できる。

フェス乱立と飽和

「似たようなフェスが多すぎて希少性がない」「どこも同じような顔ぶれ」

全国各地で小規模なフェスが乱立し、結果として出演者の取り合いが起こり、どこも似たような顔ぶれになってしまう悪循環も見られる。

肯定的・擁護的な意見:まだ終わってない派

新しい世代の台頭

「若手が活躍」「今の若者に刺さるラインナップ」

確かに、King Gnu、あいみょん、Vaundy、新しい学校のリーダーズといった新世代のアーティストが台頭し、彼らには熱狂的なファンがついている。世代交代は自然な流れだ。

フェスの多様化

「音楽だけでなくキャンプやアートも楽しめる」「体験型イベントとして進化している」

フェスティバルが単なる音楽イベントから、総合的な「体験」を提供する場に進化していることは事実だ。食事、アート、ワークショップなど、音楽以外の要素も充実している。

海外アーティストの呼びづらさ

「円安やギャラ高騰で呼べないのは仕方ない」「むしろ国内勢の底力が試されている」

確かに、円安や物価高騰、そして海外アーティストのギャラ高騰により、以前のような大物を呼ぶことは困難になっている。これは日本だけの問題ではない。

なぜ”オワコン”と感じるのか?

ノスタルジーとの比較

「昔は良かった」という記憶とのギャップ

人は往々にして過去を美化する傾向がある。2000年代のフェスが本当に現在より優れていたのか、それとも単なる懐古主義なのか、冷静に見極める必要がある。

経済的要因

円安・物価高・ギャラ高騰で海外勢が呼びづらい

これは紛れもない事実だ。1ドル150円を超える円安の中で、海外アーティストのブッキング費用は以前の1.5倍以上になっている。

文化の変化

若者の価値観が「体験」から「効率」へ

Z世代は「コスパ」を重視し、わざわざ会場まで足を運ばなくても音楽を楽しめる手段を知っている。この価値観の変化は大きい。

音楽の聴き方の変化

SpotifyやYouTubeで十分という層の増加

定額制ストリーミングサービスの普及により、月額1,000円程度で無限に音楽を楽しめる現代において、フェスの相対的な価値は下がっている。

フェスの役割の変化

音楽発見の場から”総合レジャー”へ

フェスティバルが「新しい音楽との出会いの場」から「総合的なレジャー体験」へと変化していることも、従来のフェスファンの違和感の原因かもしれない。

結論:ロックフェスの未来を考える

国内フェスの現実を受け入れる

正直に言おう。確かに国内ロックフェスのラインナップは弱い。これは否定しようのない事実だ。コロナ禍による打撃、円安による海外アーティストのブッキング費用高騰、そして若者の音楽消費行動の変化など、複合的な要因が影響している。

しかし、興味深いことに、海外フェスも本国のファンから同様にラインナップへの批判を受けている。コーチェラ2025のヘッドライナーに対しても、「Lady Gaga、Green Day、Post Maloneって…これがコーチェラ?」という声が聞かれる。つまり、これは日本だけの問題ではないのだ。

音楽業界の構造的変化

近年、商業的に成功しているのはロックよりもR&B、ヒップホップ、ポップスだ。Spotify、Apple Musicのプレイリストを見れば一目瞭然だが、若い世代が聴いているのは圧倒的にこれらのジャンルだ。新たなロックアイコンとなる存在が出ていないことも、フェスのラインナップが弱く感じる要因だろう。

商業的現実との折り合い

ロックジャンルだけでは商業的に成り立たない。これは世界共通の課題だ。だからこそ、多くのフェスが「オールジャンル化」を進めている。しかし、これが一部のコアなロック原理主義層からの反感を買っているのも事実だ。

「ロックフェス」を名乗りながらヒップホップやアイドルが出演することに違和感を覚える気持ちは理解できる。しかし、それがフェスティバルの生き残り戦略でもあるのだ。

体験の価値を再定義する

音楽を聴く・発見するだけならSpotify、YouTubeで十分という時代において、フェスティバルは「体験型レジャー」として再定義されている。音楽だけでなく、仲間との時間、自然との触れ合い、アートとの出会い、そして非日常の体験。これらを総合的に提供する場として、フェスティバルは進化し続けている。

客層の変化も顕著だ。従来のロックファンだけでなく、インスタ映えを求める若者、家族連れ、そして音楽以外の要素を求める層まで、多様な参加者がいる。

最後に:フェスの未来への提言

筆者としては、確かに「昔の方が良かった」と感じることは多い。2000年代のフジロックで体験したあの興奮、あの感動は、現在のラインナップでは味わえないかもしれない。

しかし、時代は変わった。音楽の聴き方も、若者の価値観も、経済状況も、すべてが変わった。その中で、フェスティバルも変わらざるを得ないのだ。

重要なのは、「昔は良かった」という懐古主義に浸ることではなく、現在の状況を受け入れながら、それでも音楽の素晴らしさを伝え続けることだ。Fred Again..もVampire Weekendも、確かに素晴らしいアーティストだ。彼らが新しい世代のファンを音楽に引き込む入口になるなら、それはそれで価値がある。

フェスティバルは死んでいない。ただ、形を変えて生き続けているだけだ。我々オールドスクールなロックファンも、時には新しい風を受け入れる寛容さが必要なのかもしれない。

もちろん、それでも「やっぱり物足りない」と感じるのも、また一つの真実なのだが。

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